案の定、病院からの電話。


『本庄さんが激しく嘔吐してて…。あいにく菅野先生には電話が繋がらないんです』


土日は基本的に休みなはず。

だけど、こんな電話はしょっちゅうかかってくるから、結局は出勤することになる。


「制吐剤は使ってますか?」

『処方分は使用しています』

「今日のデータを教えてください」

『えーと…』


映画館のロビーで電話していると、いつの間にか里香が追いかけて来ていた。

その表情は、不安と不満が入り混じったような複雑な感じ。

電話を切る。


「ゴメン、病院に行かなきゃ」


時計を見ると、昼の12時を指していた。

ここからタクシー飛ばしたら病院には15分で着くだろう。


「…そらくん…」

「ゴメン。この埋め合わせは必ず!」


里香がオレの左腕をつかんだ。


「…こんなこと言いたくなかったけど、私の事はどうでもいいの?」

「そんなわけないだろ?だけど…」


震える声で里香は言った。


「私と仕事、どっちが大事なの…?」