翌朝、大屋先生は不思議そうな顔をしてオレを見ていた。


「なんですか?急にやる気が出たみたいな…」


八重子さんの転院サマリーを仕上げて、早々に大屋先生にチェックしてもらったんだ。


「八重子さんとご主人に、もう一度ちゃんと話をしたいんです。今後のことについて」

「今後のこと?」

「もし必要なら、療養型でもいいけど、ホスピスとか、自宅退院とか…そういう方向性もあるってことを提示したほうがいいんじゃないかって」


大屋先生はうなずいた。


「いいでしょう。君に任せます」

「ありがとうございます!」

「…なんだか医者らしくなって、小憎たらしいですねぇ」


大屋先生はニヤリと笑った。

オレもニヤリとした。

この大屋先生と組めるのも、あと1カ月。

めいっぱい学べることを学ぼう。


「あ、そうそう。課題レポートの提出期限、過ぎてるんですが、どうなってます?」

「……あ!!!」

「その顔、忘れてたって感じですね。さて、どうしようかな…」

「すみません、すみません!!!」


大屋先生が論文の束をオレに差し出すのを見て、思わず震えあがった。

あぁ…これから英語の辞書とオトモダチだ…。

人が良さそうに見えて、実は人使いが荒い大屋先生の本性が見え隠れする今日この頃。