消化器外科は、来る日も来る日もオペ。

消化器外科のオペは、学生時代にもよく立ち会った。

最初に見た時にはホルモンが食えなくなったけど、今では平気で帰りに焼き肉に行ける。


「僕が外科を選んだ理由はね、単純!ちゃっと切って、ちゃっと治せるから!」


指導医の村瀬先生は、よく言えば大らか、悪く言えば雑。

内科系の医者から見れば、許せないくらいの雑さで仕事をしている。

でも、それが外科の世界なのだ。


「道重くんは性格的にどっちだろうね?外科っぽいっちゃ外科っぽいけど、案外几帳面なところもありそうだしねぇ。血液型は?」


オペ中に電気メスで焼き切りながら、村瀬先生は世間話を続ける。


「血液の話してたら、あらー、血が出てきたねぇ。えーい、止血!」


こんなのでいいんだろうか?

不謹慎すぎるオペに不信感を抱きそうだけど、村瀬先生の実力は案外スゴイ。

消化器外科の中で難易度が高いとされる食道がんのオペは、科内でもトップを争う症例数を誇る。

里香の毛嫌いする某先生のライバルだ。


「終了ー!おつかれさーん!」


先生の言うとおり“ちゃっと切って、ちゃっと治す”スタンスで、サクサクと仕事が進んでいく。

気持ちいいくらいに。