翌朝、花怜ちゃんの部屋に行くと、開口一番


「いきたい、です」


お、なんか元気。

こんな表情は初めてだった。


「ホント?じゃあ行こう。って言っても、近くの公園くらいまでだけど」


いつ何が起こるかわからないから、病院からそう遠くには行けない。

まだ3月になったばかりで、気温が低いことも気がかりだった。

飯塚先生と相談の結果、100m先の公園が限界ギリギリだったんだ。


「お母さんは何時に来るって?一緒に行けたらいいね」


オレがそう言うと、花怜ちゃんは首を横に振る。


「一緒に行きたくないの?」


本当は母娘水入らずで散歩してもらって、オレが後から付いて行こうかと思ってたんだけどな。

でも、計画変更。


「佐藤くんと、看護師さんと、オレと。4人で散歩だ。佐藤くんはもちろん荷物係な!はいはい、早く車いす持ってきて!」


オレの冗談に花怜ちゃんは笑った。

幸運にも今日は1日暖かくなるらしい。

担当看護師の文野さんが栄養課に頼んで、温かいスープをポットに入れて持ってきてくれた。

佐藤くんは救急バッグを背負って、オレは急変マニュアルを持って、準備は整った。