気が重い…。

原因不明の難病で、有効な治療法もないなんて、両親にどう説明しようか?

そして、本人には…?

飯塚先生は言う。


「大きな希望は望めない。だけど、小さな希望は残してやらなければ、あの子にとっての人生はこの先地獄にしかならないよ」


どんどん動かなくなっていく身体と、真っ向から向き合わなければならない。

想像しただけで気が狂いそうだ。


「もう15歳だけど、まだ15歳なんだよ」


オレが15歳のころ何を考えてた?

中高一貫の学校で、受験とは関係ないお気楽な中学3年だった。

初めて彼女ができた。

部活のレギュラーメンバーだった。

とあるバンドに夢中だった。

当時は悩みもあったかもしれないけど、毎日楽しくて仕方なかったはずだ。

自分が死ぬことなんて考えたこともなかった。

今だって、自分が死ぬことなんて考えないし、もしも自分がALSだなんて告げられたらパニックになって泣き叫ぶだろう。


「道重先生から話してみる?」

「おれっ、僕がですか!?!?」

「もちろん僕も同席するし、助け舟は出すけど。話す内容は事前に考えて、まとめてきて見せてくれる?」


まさか、研修医のオレがそんな重大な役割をさせられるなんて…。