「もしオレが奈菜ちゃんの立場だとしたら…やっぱり手術すんの嫌だと思うよ」

「同情してるの?」

「同情とかじゃなくて、色々考えたらそうだろうなって」


もし、オレがまだ16歳で、突然入院したら。

死ぬかもしれない病気だって知ったら。


「これから一生、いつ電気ショックが起きるかって怯えながら生活するのも、思い切り部活したりできなくなるのも、そもそも、そんな病気と付き合っていくなんて、たぶん受け入れられないと思う」


奈菜ちゃんは黙って聞いていた。


「すぐに決めろって言われるのが、マジ鬱陶しいと思う。コイツ、まだ研修医のくせに、なに偉そうなこと言ってんのとか、思う」


もしも、オレだったら?

そう仮定したら、無理に手術をすすめられない。


「退院、したい?」

「…したい」

「わかった。大屋先生に頼んであげる。オレの責任で、退院許可出してもらう」

「…先生、本気???」


バカな研修医だって言われるだろうな。

でも、これは口から出まかせでも何でもない。

医局のドアを出た時点で決めていた。


「待ってて、あとで来るから」

「うそ…先生??ホントに??」


奈菜ちゃんは驚いた表情でオレを見ていた。

…オレに任せなさい!!

ドキドキしながらも、オレの足は病室を出て、まっすぐ医局へと向かっていた。