センリが部屋を出ていったのを確認してから、リメルはベッドの横にある大きなクローゼットを開く。そして、黒と白のゴスロリちっくな服を取り出した。

「アンタは黒と白しか着ないねェ……」

 ふと後ろを振り向くと、目に入ったのは綺麗なエメラルドグリーンの髪の毛。

「誰って顔してんなァ……。ま、一応自己紹介しといてやるよォ。俺の名はS。アンタ、リメル・アルビスだろォ?」

「だったら何だ、僕を殺す気か」

 あくまでリメルは冷静だった。

「いいやァ……アンタはまだ利用価値があるからなァ……」

「利用価値?」

「おっとォ……これ以上は言えねェなァ……。ま、詳しい事は“向こうの世界”で教えてやるよォ」

 そう言って、Sと呼ばれたそいつは怪しげに笑った。

 リメルは相変わらず冷静な目でSを見るが、少ししてから自分の体の異変に気付いた。

「体が軽いだろォ? もう少しでお前は、この世界とサヨナラするんだぜェ」

「何を、言って……」

「だから詳しくは向こうにいってから教えてやるっつってんだろォ? ほら、とっとと行け……よっ!」

 パチン。Sが指を鳴らすと、リメルの姿は一瞬にして消えた。

「無事に生きていられたら良いなァ……リメル・アルビスさんよォ」

 Sは妖艶な笑みを浮かべた。

   *

 気が付いたら、見慣れない風景が目の前に広がっていた。

「ここは一体……」

 そしてふと、さっきのSという奴が言っていた言葉を思い出す。

 “詳しい事は向こうの世界で教えてやるよォ”

「奴の仕業か……」

 近くの岩に座り込んでいると、目の前に白い光が現れて、その中からさっきのSとかいう奴が現れた。

「よォ、アルビスさんよォ」

 能天気に手なんか振って来るSを、リメルは無言で睨み付けた。

「んな怖い顔すんなってのよォ」

「ここはどこなんだ」

「ここかァ? 異世界ってヤツだァ……。まぁ良いんだけどよォ。どうせ嫌でも分かるからよォ」

 そう言ってSは、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「異世界にようこそ、歓迎するぜェ? アルビスさんよォ」

 彼女達の冒険はまだ、始まったばかり。