「なんだよ、これ…?」

「手紙…みたいね」
手紙…相模とかいうやつへか?

「きゃっ!?」

「翠さん!?」

翠さんは手紙を俺に見せた。手紙には


『彼女が見ている』

とだけ書かれていた。

彼女?俺が周りを見回したとき、ソレと目があった。

「…あ゛」

それは倒れている奏太の横にいる。

ゆっくりと、だが着実に俺たちに近づいてくる。

「急いで!はやくここから出て!」

俺は少年の声にハッとして、呆然と立ち尽くしている翠さんの手を掴む。

「翠さん!とにかくここから逃げましょう!」

「あ…あ…わか、って…」

だが翠さんは固まったままだ。

「はやく!」

少年が焦り気味に叫ぶ。

「翠さん!…翠っ!」

俺は思い切り翠さんの名前を呼ぶ。

「っ!」

翠さんは気がついたのか、ハッとした顔で俺をみた。

「とりあえず、にげっぞ!」

俺は翠さんの手をつかみ駆け出す。

音楽室から滑るように出て、扉を閉める。少し中の様子が見えた。

小学生くらいの男の子…がいた。

「僕も長くは持たないよ!一時間以内に鍵を全部集めて来てっ!」

俺は翠さんの手を引き、美術室へと駆け出した。