〈翠と新〉


事務室前についた俺たちが見たものは、倒れている几亥谷だった。

「几亥谷?」

あんな体験の後だから正直怖い。もしかしたら、几亥谷は…

「…大丈夫。気を失ってるだけだわ」

いつの間にか翠さんは几亥谷の隣にいた。

「あ。あぁ」

さっきから武藤の姿がない。


「ぐ…ん…」

「き、几亥谷!?」


「ぁ。………」

几亥谷は俺たちを見、周りをみた。そして、

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っぁあ゛!!!!!」

「き、几亥谷さん?」

翠さんが落ち着かせようとするが、無駄。


「紫稀っ!紫稀っ!?」


几亥谷は武藤の名前を叫びながら事務室へと走る。


几亥谷が事務室に入り少しして悲鳴が聞こえた。


「いやぁあ゛あ゛ぁあ゛あ…紫稀っ?!紫稀っ!」


「几亥谷!何があったんだ!几亥谷…」
事務室に入った俺たちが見たのは、胸から血を流している武藤だった。


何故か俺は、あたまのなかで、まだマシだ。と考えていた。眞埜硲の死体をみていたからだろうか。

武藤の近くの金庫…?らしき箱の中には鍵が入っていた。


…なにかの書類と共に。


「如月、奏太?」

出てきた単語に違和感を覚える。


だが、これはかなり前の出来事だ。

若いままだなんて…

『如月奏太は行方不明』



『如月奏太とおもわしき遺体が音楽室で発見された。彼の手には、小さな箱とともに“これで出られる”というメモが残されていた。箱の鍵は見つかってはいない。校長と警察は、彼の握っていた箱を音楽室にしまうことにした。』

『彼の死因は不明警察も明かさない。ただ、証言やその場にいた人物に聞くと、どうして』

…そのさきは破られていた。


俺は職員室で手に入れた鍵が必要の無いものだということに気がついた。

それから、鍵がひとつ置いてあったのを、俺は鍵をポケットに閉まい、言った。

「…とりあえず、音楽室に行くか」


「ええ」

「………うん」



こうして、俺たち三人は音楽室へと向かった。

職員室で手に入れた鍵を捨てて。