〈翠と新〉

「っ!ぐぉぉっ!…っくぅ~」

「無駄だよ、進藤」

武藤がいう。

「~~~っ!」

俺は近くにあった消火器を投げつける。

バコンッ ガッ …


「マジ、か…はは。本当に、開かない…」

「鍵、探しに行きましょう」

ずっと黙っていた翠さんが提案した。

「鍵は、職員室にあるはずです。」

「けど…翠、だいじょうぶ?」

そうだ、校内には凶悪犯がいるかもしれないのだ。何より、翠さんは死んだ眞埜硲を見ているのだ。

「だいじょうぶです。私一人でいく。だから、几亥谷さん達は、ここでみんなを待っていて。」

「…わかった」

武藤が頷く。

「お、俺も行くよ!一人は危ない」

「だめ。危ない。進藤くんも、ここにいて。」

翠さんは冷たく言う。

「ついて行くよ。」
翠さんを危険な目には、遭わせたくない。

「でも、もし二人して何かあったら…」
「凶悪犯相手だったら、ひとりより二人の方が強いよ。それに…もしどっちかに何かあった場合、片方が逃げて鍵を取りに行ったり、紫稀達に伝えにいける。」

ただ、それはあくまで俺に何かあった場合のみ、だ。翠さんに何かあったら、絶対助けるし、逃げない。

「…そう、だね」

翠さんは納得してくれたようだ。

「じゃぁ、行こう、進藤くん」

「はいっ」

「翠!進藤!」

几亥谷が俺を呼ぶ。
「「?」」

「ぜったい…二人で帰ってきてね。それから、途中で誰かに会ったら、ここにくるようにって、…伝えて」

「わかった」
「はい」

翠さんは、返事をすると、すぐに歩き出した。俺は、翠さんのあとを追う。




職員室の前に着いたときだった。

「きゃあぁぁあ゛ぁぁあぁあっ!」

どこからか、悲鳴がした。

「!?」「きゃっ」

俺と翠さんは顔を見合わせて、走り出した。…悲鳴のした方へと。

「いやっ!だれかっ!たすけっ」

声が聞こえる。

俺たちは迷わずに走った。四階へと。

「お願いっ開いてっ!開け!だしって!だれか…如月くん…」

理科室からだ。それより俺は、いや、俺たちは『如月』という名前にびっくりした。

「だ、だれですっ?」

翠さんが走る。

理科室の方だ。

…この声、誰だか思い出しそうで思い出せない。