「私は、お兄ちゃんから全てを奪ってしまったんです……」
両親、夢、全てを……。
「うん、それで?」
真壁さんは、2本目のタバコを咥えると火をつけた。
「私、2歳の時に、死ぬかもしれない病気を発症して……」
「うん」
「ずっと、入退院を繰り返す生活をしていたんです……」
「両親が、お前に付きっきりだったから兄貴は寂しかったと……。そんなとこ?」
「はい……」
「それで何で、お前が兄貴の全てを奪ったことになるんだよ」
真壁さんはそう言ってタバコの煙を吐き出した。
「1年前に、両親は事故で亡くなりました……」
「えっ?」
真壁さんはタバコを咥えようとしていた手を止めた。



