「名刺だってタダじゃねぇんだよ。人様からもらったもんをぐちゃぐちゃにすんじゃねぇよ」
真壁さんはそう言って、隣に座ってきた。
「ほら」
名刺を差し出す真壁さん。
「ゴメンなさい……」
そう言って真壁さんから名刺を受け取った。
「また会ったな。てか、幽霊じゃねぇよな?」
真壁さんがクスッと笑う。
「えっ?」
「いや、死にたがってじゃん?だから、ここにいる……えっと、ヒヨコ?だっけ?」
「いえ、日和です」
「そうだ、日和だ。ヒヨコみてぇな名前だったなと……」
子供にヒヨコと名付ける親がどこにいますか。
「だから、ここにいる日和は幽霊なのかな?と……」
“日和”と呼び捨てにされて胸が大きく跳ねる。
「幽霊じゃありません。ちゃんと生きてます……」
「そっか、死に損なったのか」
真壁さんはそう言ってクスクス笑った。



