「親父もお袋も、お前に付きっきりで、俺はずっと小さい時からひとりぼっちだったんだよ。
学校から家に帰ってもひとりで、飯もひとりで食って、学校であったことを話そうと思っても疲れてるとか言われて……。
運動会も授業参観もひとりぼっちで……。
構って欲しくてワガママ言っても、お兄ちゃんなんだからって言われて……。
お前がいるから、俺はワガママも聞いてもらえず、構ってももらえない。
兄貴だからって我慢もしなきゃいけない。
だから1回だけ、親父に日和ばっかり可愛がって!って言ったことあるんだよ。
そしたらさ、親父、何て言ったと思う?」
私は、首を左右に振った。
「妹が病気と闘ってるのに、お前は冷たい人間だ。そう言って、9歳だった俺の顔を思いっきり殴ったんだよ」
お兄ちゃんは、そう言ってクスッと笑った。



