「1人の生徒を守れなかった悔しさ、教師としての不甲斐無さ……。彼女の両親に責められても罵倒されても土下座して謝ることしか出来なくて……」


「先生……」


「彼女の葬式の時に泣いているクラスのやつらを見てると腹立って、もし教師じゃなかったら殴ってたと思う。

アイツらは何事もなかったかのように今を生きてるんだよ。

それが悔しくてな……。

どうして彼女の言葉を鵜呑みにしたんだ。

どうして信じてしまったんだ。

どうして、どうして……。

そればっかりが頭をグルグル回って……」


「うん……」


「もう無理だと思ったんだ……教師を続けることが……。1人の生徒も守れなかった俺には教師は無理だと思った。だから1年前に教師を辞めたんだ……」



私は先生の腰に手を回し、ギュッと抱きしめた。



「日和?」



先生がビックリした声を出す。


もし、イジメがなかったら……。


先生は今も中学校教師を続けているのかな。


小さい頃から夢見ていた教師という職業。


それを失うことは、先生にとってどんだけ苦しかっただろう……。