「あの男のところへ行くんだろ?」
私は首を左右に振った。
「もう会わないって言ったよな?日曜日に外に出るなって言ったら、わかったって言ったよな?なのに約束破ってんじゃねぇぞ!」
「ちがっ……」
「はぁ?」
お兄ちゃんは私の背中を思いっきり蹴ってきた。
ジンジンとした痛みが背中に広がる。
痛さで声が出ない。
「あの男が、そんなに好きなのか?なぁ?」
お兄ちゃんが髪の毛を引っ張って、床に伏せていた私の顔を持ち上げた。
「何とか言えよ!」
「違う!あの人に会うんじゃない!」
あの日、もう先生とは会わないとお兄ちゃんに約束させられた。
日曜日に外に出るなと言われた。
でも今日は行かなきゃいけなんだ。
『わかったな。必ず来いよ。もし来なかったらどうなっても知らねぇからな』
マイの言葉が頭に浮かんだ。
マイとの約束を守らなきゃ、先生が……。



