「うるせぇ!黙れ!黙れ黙れ黙れ!」



お兄ちゃんは、そう言って再び私の胸ぐらを掴んできた。



「お前は、自分の立場がわかってんのか!男とデートするような立場じゃねぇんだよ!お前は俺の奴隷なんだ。奴隷はな、人を好きなったらいけねぇんだよ!」


「酷い……」


「はぁ?酷い?酷いのはどっちだよ!今まで酷いことしてきたのはどっちだよ!」


「でも……」



だからって人を好きになってはいけないなんて……。


それはおかしいよ。



「口答えしてんじゃねぇよ!お前はな、幸せになったらいけねぇんだよ!一生、俺の言いなりなんだよ!それが嫌ならな……」



胸ぐらを掴んでいた手に力を入れる。



「さっさと死ねよ……」



お兄ちゃんはそう静かな口調で言ったあと、ボロボロになったネコのぬいぐるみのキーホルダーを投げつけ、部屋を出て行った。


私はネコのぬいぐるみのキーホルダーをギュッと抱きしめる。


ボロボロになって、中から綿が出て、原形を留めてない。


先生にもらったのに……。


先生から……。


私の気持ちは、お兄ちゃんによって踏みにじられた……。


私はネコのぬいぐるみのキーホルダーを抱きしめたまま泣き続けた。