その時、ふと現実に戻された感覚が戻り……。
「……げほっ!げほっ!」
咳きこみながら目を開けた。
軽くなった私の体の上には、もう先生の姿はなかった。
上半身を起こすと、私の横にあぐらをかいて座っている先生。
「せん、せ?」
どうして?
ねぇ、どうして私を殺してくれないの?
「俺、やっぱ無理だわ」
「えっ?」
「お前のこと、殺すの」
「どう、して?」
「だって、お前を殺したら、俺、犯罪者になるんだぜ?俺、これからまだまだやりたいことあるから犯罪者にはなりたくねぇし」
先生はそう言って、うしろに手をついて天井を見つめていた。



