「待って」
そう言われても逃げてしまったあの日、上の空でずっと気がかりにしていた。
────その人が目の前にいるなんて。
一緒の学校だとはあのとき知ったけれど、まさか“伊吹隼人”の友達とは思わなかった。
お母さんが“世間て狭いわね”と言ってた意味が今になってしっくりくる。
でも、あの感じだと私には気づいてないみたい。
それほどにも、眼鏡を外すと印象が変わるから驚きだ。
……気付く訳ないよね。
だって私が忘れてたんだもん、だからあの人はもうとっくに忘れている筈。
「なんか、顔に着いてる?」
「え?」
突然話しかけられてドキリと胸が跳ねた。
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