いつの間にか、上の空は消え去っていた。
――――4月の半ば。
「おはよ、さくちゃん!」
「おはよう、みほちゃん」
こうやって言い合うのは、なんだか照れ臭くて緊張してたけど少しずつ慣れてきた。
みほちゃんはニッコリ笑うと、後ろの席へと着いて鞄を横に掛ける。
私は、後ろへと向き直った。
「さくちゃん、聞いて!昨日もいったんだけど、かっこよかったぁ」
みほちゃんは、あの日一緒にカフェに行って以来“好きな人”の話ばかりするのだった。
そのたびに話を聞いて、ドキドキして返事に困る自分がいる。
凄く考えた一言は、やっぱり「そうなんだ」になるんだけどね。
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