「ごめんな、さい……」
その子の目から、引いていた涙がまた溢れ、ついにこぼれて両頬に伝った。
「はぁ……」
ため息を吐くその人は、私のことは見えてないみたいだ。
この空気にどうしたら良いか分からない。
……女の子のお兄ちゃん、だよね?
「あの……」
「あ、はい!」
突然、話かけられはっとする。
「妹がすみません……」
そのとき初めて目が合い、ドキリとした。
「い、いえ…!」
置いていた鞄をぎゅっと抱きしめ、勢い良く立った。
私、知ってる。
『これ、妹に貰ったんだ』
……私。
「良かった…では、失礼します!」
私は、手短に言うと、少しずつ後ずさりしていく。
女の子は私を見上げながらきょとんとしている。
「あ、待って!」
私は、その場から走り去った。
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