だけど、そんな私には気付いてないみたい。 さっと私の手から離すと口を開いた。 「あげる」 そう言ってキラキラの笑顔を向けると、男の子は私から離れて行く。 私は何も言えず、ただ真っ直ぐ前にその姿を見ることしか出来なかった。 ―――風の流れに従う髪を押さえながら 自転車で走り去って行く男の子を、姿が見えなくなるまで見ていた。 姿が見えなくなっても、絆創膏を包んでいる手はまだ少し熱を帯びていた。 .