私の返事を聞いて、康史はあからさまに肩を落とす。すると、パーマがかかったミルクティー色の髪も一緒に揺れた。相変わらず美味しそうな髪の色。そんなことを呑気に考えていると、濡れた髪を優しく拭う手がタオル越しに私の頭を軽くチョップしてきた。

「……お前な、携帯は携帯しねぇと意味ねーだろ? ったく、こんな濡れちまって。風邪ひかねー内にさっさと部屋上がって風呂入れよ」

「はいはい、わかってるよ」

チョップされ若干ムカついたものの、心配してくれているのは顔を見れば一目瞭然だったので素直に頷く。何より濡れて重くなった服が体に張りついて、いい加減気持ち悪かった。

「あ、冬華(トウカ)!お前明日っから学校だろ?朝 、送ってってやるよ!」

「え…、いーの?康史、今日朝まででしょ?」

「いいって、どうせ通り道だし。帰るついでだ」

「んー、じゃ送って貰おっかな」

「おう。じゃまた明日な、いい子にして寝ろよ! おやすみ!」

年上とは思えない無邪気な笑顔でそう言われると 、何だか子供扱いするような言葉も許せてしまうのは康史だからだろう。