1人歩く賑やかな繁華街に雨が降り、アスファトが黒く染まっていく。 突然の雨に行き交う人々はどこか早足になり、並んで止まっていたタクシーは次々と忙しなく走り回り始める。 それ以外は、特にいつもと何一つ変わらない。 暗闇を照らす色鮮やかなネオンは眩しいほどに光り輝き、派手な化粧で着飾った女達は男に媚びを売っている。酒に酔って騒ぐサラリーマンや、女の子に声をかけるホスト。怒鳴り声を上げながら道端で取っ組み合いの喧嘩する不良学生に、派手なスーツを纏った強面集団。
見慣れた街並みのよくある喧騒を眺めながら、私は大通りを抜けて少し細い一本 の路地裏へと入った。
向かったのは、その路地を抜けた先にある表通りから少し離れた小さな店。 《blume》という、クラブだ。 私はその店の賑やかな音の漏れる入口を通りすぎると、裏口に回りその扉を遠慮無しに開いた。
「…ただいま」
私のその声に洗い物をしていた康史(ヤスシ)が振り返り、シャツの袖を捲ったままの状態でその動きを止め固まった。 まあ、驚くのも無理はない。 何せ今の私はいきなり降りだした雨に傘など持ち合わせておらず、歩いて帰宅する内にずぶ濡れになってしまっていたからだ。
すぐさま意識を取り戻した康史は手近にあったタオルを掴むと、慌てて此方へ近付いてきた。
「あーあー、ずぶ濡れじゃねぇか!電話くれりゃあ、迎えくらい行ったのに」
「携帯、部屋に忘れた」
見慣れた街並みのよくある喧騒を眺めながら、私は大通りを抜けて少し細い一本 の路地裏へと入った。
向かったのは、その路地を抜けた先にある表通りから少し離れた小さな店。 《blume》という、クラブだ。 私はその店の賑やかな音の漏れる入口を通りすぎると、裏口に回りその扉を遠慮無しに開いた。
「…ただいま」
私のその声に洗い物をしていた康史(ヤスシ)が振り返り、シャツの袖を捲ったままの状態でその動きを止め固まった。 まあ、驚くのも無理はない。 何せ今の私はいきなり降りだした雨に傘など持ち合わせておらず、歩いて帰宅する内にずぶ濡れになってしまっていたからだ。
すぐさま意識を取り戻した康史は手近にあったタオルを掴むと、慌てて此方へ近付いてきた。
「あーあー、ずぶ濡れじゃねぇか!電話くれりゃあ、迎えくらい行ったのに」
「携帯、部屋に忘れた」
