奇妙な関係 ~オスとワタシの奮闘記~

案内している間、優君は静かだった。


静かなほうが助かるけど、調子狂うな。



「優君は将来のことで悩んでるの?」

「悩んでるって程でもない。 ただ何すればいいのかわかんないだけ」

「社長とそういう話はしないの?」

「オヤジは俺にたいして興味も期待もないよ」

「そんな事ないでしょ。 この見学だって、優君が会社に興味をもってくれたって嬉しそうだったよ」

「スペアが必要なときがきただけ……」



え?


スペアってなに?


優君は怒ってる感じも悲しそうな感じもなく、いつもと変わらぬ表情だった。



「俺はオヤジと愛人との間にできた子供」

「……え?」

「前妻が病気で死んで、俺のお袋が正妻に成り上がったって事。 この話し誰にも言ったことなかったけど、実際はなしてみると何かスッキリした」



清々しい笑顔。


こういう話ってドラマの中だけだと思ってた。


かける言葉がみつからない。



「そんな顔しないでよ。 また前みたいに連絡してもいい?」

「……うん」

「文美、ありがとう」



『ありがとう』を言ってもらえる様な事なんて何もしていない。


それでも、あまりにも優君が嬉しそうな顔をしていたから、私は何も言えなかった。