雨の日は頭がずきずきするから苦手。よく考えてみればそんなのわたしだけじゃないのだろうけれど、こうにも動けなくなってしまうと、頭を抱えながらごろごろしているのが世界にわたしだけじゃないかと案じてしまうから不思議だ。
じわりじわりと強くなっているそれに、戸棚へしっかりしまい込んでいるお薬を飲んでしまおうかと迷ってしまう。雨は止むどころか遠くの方からゆっくりと雷を連れてくる。すっかり逆なでされてしまった痛みがざわつく。さっきからこれの繰り返しだ。

「そんなにお辛いなら、我慢せずにお薬を飲んだ方がいいではないですか」
「それはそうなんだけど」

侑胡の言っていることは、あながち間違っていないと思う。めいっぱいのやせ我慢をしてみても、良くなる気配はこれっぽっちも見当たらない。とはいえお薬ばかり頼りにするのも良くないということで、ついこの間「今月はもうお薬を飲まないで過ごしてみせるんだから」なんて壮絶なことを言ってみせたばかりだというのに、早速これなんだもの。数日前の自分がちょっぴり恨めしくなる。そういえば侑胡からもらった「鈴音にしては大きく出ましたね」なんて台詞も、記憶の片隅から引っ張り出してしまって、ついついじっとりと侑胡を見てしまう。それでも目に入ってきたのは、ただひたすら、あるいはのんびりと手に持った書籍へと視線を釘付けているその人の横顔だった。それがあまりにも綺麗だったものだから、うっかり見とれてしまう。一段と強い痛みがわたしの後頭部あたりを通り過ぎるけれど、瞳に映る細い指が、小さな音を立ててページをめくるのを見つめているだけで、何とも言えない心地良さが胸いっぱいに広がっていけば、突き刺さるような痛みさえ苦にならないような気持
ちになるのだった。

「どうかしましたか?」
「ううん、何でもないの」
「痛みは止んだのですか?」
「まだだよ。痛い」

それならどうしてそんな嬉しそうにしているのですかと聞かれるけれど、侑胡が傍にいてくれるから、とは何となく気恥ずかしい思いがして、言えなかった。ずきずきするそれは、相変わらず続いている。それでも、大好きなひとがすぐ手の届くところにいてくれるのだから、わたしは幸せ者だ。愛おしい気持ちで胸がいっぱいになる。

「痛いのなら、百面相したりせず、大人しく寝ていて下さい。鈴音の気が済むまで、ここにいますから」
「うん、ありがとう」

好きやら嫌いやらという心からの「思い」は相手にも伝わるのだという。それなら、ちらりとこちらを見やった侑胡の優しくてとろけそうなあの表情も、わたしへ向けてくれた愛なのだと信じる。雨はすっかり上がって、柔らかな光が差し込むところだった。

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