就職してまだ数ヶ月の俺は朝子をチザキ薔薇園に呼び出して、結婚することにしたと告げた。俺はその時ただの子どもで、少し成長した姿を朝子に見せたかったのだろう。高台の風に、まだ真新しいスーツ姿のネクタイがバタバタと吹かれた。その後姿をどんな思いで心に焼きつけたのかなど俺は気づかず、「特別な友達になれないか」と言う馬鹿げたセリフが最後になった。