カチ、
私が口に加えて、タバコに火を付けて、
それを彼に渡した。
彼がそれを加えると、
一瞬、彼の目が
とろん、としたように見えた。
それから、
一言、
「くらくらする」
と呟いた。
ふふっ、と私は笑った。
彼の手から、タバコを静かに取って
缶に押し付けて、揉み消した。
それを見ている彼の目は、
なぜか淋しそうだった。
「そろそろ勉強に戻らなくちゃ」
思ってもいない事を口にして、彼に背を向けると
「外、もう雪積もってる」
と、ぼんやりとした返事が返ってきた。
「人の話、聞いてる?」
笑いながら、彼の視線をたどると、
その先には、外で子供たちが雪合戦をしている姿があった。
「外、行こうか」
彼の、唐突な提案。
「雪は、嫌いなの」
さらりと返す。
じっ、と、私を見た。
不思議な生き物を見るように。
「…しもやけ、できるから」
少し恥ずかしくて、うつむきながら付け足すと、
彼はカラカラと笑って、部屋を出て行った。

