「もうすぐ、着くぞ」

「やっぱり、いきなり環境が変わって、戸惑うかもしれないけど」

別にあの家にいたくもなかった。

「弟になる2人も、楽しみにしてたんだよ」

どうでもいいのに。


大人の、
妙に哀れむ目と、

気を使ってギクシャクしている空気が、

うざったくてしかたなかった。


「着いたぞ」
そう言って笑顔を作り、
玄関のドアを開けたおじさんと、

先に入って手招きしているおばさんに、

にっこりと愛想良く笑って

「これから、よろしくお願いします」

と、ぶかぶかと頭を下げた。


そんな自分が滑稽で笑えたけど、

そんな俺の姿を見て、目に涙を溜めて泣き笑いしているおばさんと、

お前はもう、家族の一員だ、と言うように
俺の肩に手を乗せて、満足そうにうなずいているおじさんを見たら、

なんだかもうくだらなくなった。



俺の実の両親は、事故で死んだ。

みんな、そう言っている。



俺だけが、確信していたこと。



あれは、自殺だ。

運転していたのは、母だった。

最近母は、ヒステリックの度が過ぎていた。

親父の浮気が原因だった。


うんざりだった。

そして、ぱったりと逝ってしまった。