カタチのないセカイの為に



夕飯が食べ終わって、

まだ四人とも席に着いているところで、
理子が口を開いた。


「優潤、今の携帯の番号教えて。」


麦茶を飲んでいた優潤の顔が、

ほんの一瞬、崩れるように綻んだかと思うと、
何事も無かったように、真顔になった。


「ごめん。
教えてなかったっけ?
まだ、番号覚えてないんだ。

ちょっと待って。」


さっきと一緒だ。


優潤の口から、再度リピートされる言葉に、

噴出しそうになった笑いを、

理子は必死で止めた。


掌に握られている携帯が、
テーブルの脇から出て来る。


優潤は、『チャンスだ!!』と頭の中で叫んだ。

今、美咲に携帯を聞くチャンスが、
目の前にある。

高が、携帯電話の番号を聞くのに、
こんなに緊張したのは、

生まれて始めてだ!!


不意を突かれさえしなければ、

感情を表に出さない事は、
優潤にとって、とても容易い事。



祖父に、
感情を表に出さないように、
教育されていたから。