ドライヴ〜密室の教習車〜

『あのかーねーおーなら』
「……はい。どうしたんだ、ユキちゃん。え? 本当か?……わかった、ちょっとこれから行ってもいいか?』

 電話を切った篠さんに、とりあえず聞いてみた。
「彼女ですか?」

 篠さんは渋い顔をした。

「違うさ。彼女でもないし、むしろ《彼女》でもない」

 私は首をかしげた。
 意味がわからないのですが。

「なぎさん、すまないが先にちょっと寄り道してもいいか?」

「ええ! ユキちゃんのところにですか!? これからって、本当にこれからなんですか?」

「仕方ないだろう、急を要することだ」

 今のこの状況で、藤田さんよりも先に会わなきゃいけない《ユキちゃん》とは、一体何者だろう。