ドライヴ〜密室の教習車〜

   〈4〉

「3時間目に村上さんが26号車で教習をする、ということを担当以外の指導員が知ることは可能なのか?」

「……全然出来ます。パソコンでも見れるし、全体の配車表もアドバイザー室に貼ってるし」

 私がそう答えると「そうか……」とつぶやきながら、篠さんはまた考え込んでしまったようだった。

 そして、ゆっくり顔を上げ、真剣な目で私を見た。

「なぎさん、藤田さんに話を聞くことはできそうか?」

 私は気付いた。
 篠さんは、今、初めて藤田さんのことを《藤田さん》と呼んだ。
 強い、覚悟を感じた。

「……はい。藤田さんのアパート、わかります」

「よし、じゃあ行こう」

 篠さんがソファから立ち上がろうとした瞬間、また和田アキ子の着うたが流れた。