ドライヴ〜密室の教習車〜

「なぎさんは、探偵にはむいてないなあ」


 篠さんが苦笑いをしながら私を見ていた。
「私情、挟み過ぎ」

 
 自分でも十分わかっていた。

 一つ事実がわかるたびに、感情を揺るがされ、冷静な判断が出来ないでいる。
 自分に近い人達の《別の顔》を想像するだけで、胸が引きちぎられそうだった。

「仕方ないじゃないですか。だって私は……」
 

「人を信じれる素直なところ。思ったことがすぐ顔に出る正直なところ。なぎさんの良いところだ」


 私の言葉をかき消すかのように発せられた篠さんのその言葉は、思いもよらないものだった。