ドライヴ〜密室の教習車〜

「なぎさん、もしかしてゴリ田さんが?」

「うん、二時間目に26号車で教習したのは藤田さんだって!」

 私は興奮気味に篠さんに話した。

 
 文乃は《二時間目の指導員》ではなかった。

 そのことがわかり、私は波打つ気持ちを抑えられずにいた。


「……でも、まさかあのゴリラさんがなあ」


 篠さんのつぶやく声が、私の肩を揺らす。


 藤田さんが、村上くんを殺した……?

 あの、人の良い藤田さんに、そんなことができるのだろうか。
 体に似合わず、本当に、本当に優しい、藤田さん。

 そういえば、文乃のこともあんなに心配していたじゃないか。

 そんな藤田さんに……。