ドライヴ〜密室の教習車〜

 私は、もう泣き叫びたい心境になっていた。

 もう、どうやっても文乃を助けることが出来ないのかもしれない。

 文乃の柔かい笑顔ばかりが、頭に浮かぶ。

 
「……絶対、自分の担当車両を使うものなのか?」


 篠さんのその言葉に、私は少し戸惑った。

 自分の思考に、車線変更で割りこまれたような感じだ。
 一瞬不快だったが、徐々にそれは不思議な気持ちへと形を変えていた。

「えーと……よっぽどのことがない限りは……」

「よっぽどのことって?」

「車の調子が悪いとか、配車ミスとか……」

「二時間目も里卯さんは確かに26号車に乗ってたのか?」