〈5〉

 私の中に一体何度吹けば、風は止むのだろう。

 ねえ、和紗。

 私の知っている人達は、みんなどこに行ってしまったのだろう。


 里子ちゃんは、先程はそんな話は一切しなかった。
 村上くんとはずっと話していない、と言っていたのだ。


 信じることが、信じられない。
 信じられないことが、信じられない。


 もしかしたら文乃も、藤田さんも、私の知らない《自分》を隠しているのかもしれない。

 それは《殺人を犯す自分》。


 でも……。

 ふ、と。私の頭が、回転の中心である軸の傾きを変えた

 そういえば文乃に凶器を仕込むことはほぼ不可能なんだった。

 じゃあ、本当に藤田さんが、2時間目の教習の後に……。