「日向君…?」


急に、どうしたんだろう…?


疑問符を浮かべていると、日向君は多くの人が座って見ている土手の空いている場所に、ゆっくりしゃがんだ。


「花火…始まったし、俺たちも見よう?」


「えっ、でも……」


「このまま…クラスのみんなを捜してたら、花火が終わりそうな気がするから。せっかく花火を見に来たんだし、見なきゃ勿体ないだろ…?」


「……う、うん。」


柔らかい笑みを浮かべる日向君に頷いた私は、隣に座った。


「ごめんね…。私が、はぐれたりしなければ、みんなと一緒に花火…見られたのに…。」


みんなだって、きっと…日向君と一緒に見たかったよね…花火。


俯こうとした時、日向君は繋いでいた私の手を強く握った。


「そんなに気にしなくていいよ…。正直言うと、俺…この方が良かった…って思ってるし…。」


「えっ…」


日向君の方に視線を向ける。


次々と打ち上がる花火が、日向君の端正な顔を明るく照らした。


「だって、椎名と二人で…思いっきり花火を楽しめるから。」


花火の大きな音に混じって、心臓が勢いよく跳ねた。