「日向君、本当にありがとうっ…!大切に使うね…!」
パスケースを握りしめて、満面の笑みを零す。
こんなに嬉しかった誕生日プレゼント、初めて…。
今日から早速、このパスケース…使おう…。
ウキウキと心を弾ませながら、パスケースをジッと見つめていると…
「椎名…。」
降ってきた日向君の声。
顔を上げると、視線が絡まった。
「ひゅ、日向君…?」
真っ直ぐ見つめる日向君の表情は、今まで見たことがないぐらい、とても真剣で…。
私は目を逸らせずに固まってしまった。
少しの間、沈黙が流れる。
お互い、見つめあうだけの時間。
まるで、時間が止まっているんじゃないか…と思うほど長く感じた。
「あのさ、俺……」
静かな空気を破って、口を開いた日向君。
その言葉の続きに、耳を傾けようとした時だった。


