「か、かたっ…片時も!?」


動揺で声が見事に裏返る。


顔が沸騰しているんじゃないかと思うぐらい熱い。


「あのっ、そんなにずっと見られるのは恥ずかしいから…。私よりも…景色とか見てもらった方が、見応えがあると思うよ…。こ、このカフェの中庭…すごく素敵だし…。」


日向君の視線を窓の外に移してもらうべく、身振り手振りでアピールしていると…。



「あっ、椎名…危ない!」


突然、日向君が私の右手首をパシッと掴んだ。


「グラスに肘があたりそうだったから…。」


その言葉にハッとして視線をテーブルに落とす。


肘の下には、水の入ったグラスがあった。


日向君が手を掴んでくれなかったら、グラスが倒れて水が零れてたよね…絶対。


そんなことになったら、更に迷惑かけてた…。


「日向君、ごめんね…。あっ、ありがとう…。」


「俺の方こそ、急に手首掴んだりしてごめんな?痛くなかった?」


危うく水を零しそうなった私に対して、怒ったり呆れたりするどころか…


手首…気に掛けてくれるんだ…。


「うん、大丈夫…。痛くないよ…。」


私は、胸の奥がジワリと熱くなるのを感じた。