「痛っ!!何も叩くことねぇだろ?」
「お前、リアクションが大げさ。そんなに強く叩いてないだろうが。」
叩かれた部分を押さえる唐沢君に、日向君は呆れ気味にため息をつく。
そんな光景をジッと見ていると、日向君は私の方に視線を向けた。
「あっ、椎名…。ちょっと話したいことがあるんだけど…」
「わ、私に…?」
「うん。」
ビックリして自分で自分を指差す。
日向君の表情は、先ほどの不機嫌そうなものから一転、穏やかな笑顔に変わっていた。
「あのさ、毎年…8月の終わり頃に、街の郊外の河川敷でやってる花火大会、知ってる?」
「う、うん…知ってる!花火が何千発も打ち上がって、たくさんの人で賑わうんだよね…。私、小学生の頃に何度か行ったことあるよ…。」
そう言えば、最近は行ってないなぁ…。
「それでさ、今回…その花火大会をクラスのみんなで見に行こう、って企画が持ち上がってるんだ…。だから、椎名も参加しない?」
「私も!?い、いいの…?」
「同じクラスなんだから、当たり前じゃん。今、参加出来るかどうか、みんなに聞いて回ってるんだけど、どう?この日って、都合…悪い?」
日向君は花火大会のチラシを私の前に差し出した。


