「ひゃっ!冷たっ…」


見上げると、灰色の空から雨粒が一つ…また一つと零れ落ちてくる。


周りのアスファルトが、瞬く間に濡れ始めた。


「雨、降ってきちまったな…。ちょっと待って?傘…出すから。」


日向君は握っていた私の手を離して、バッグの中から折り畳み傘を取り出した。


よ、良かった…。
日向君…手を離してくれて…。


あのまま、手を握られっぱなしだったら、ドキドキし過ぎちゃって…


日向君に、指先から鼓動の音が聞こえちゃいそうだったもん…。


私は、自分の手を見つめた。


日向君の大きくて暖かい手の感触。


ちゃんと残ってる…。


今、触れられてるわけじゃないのに、こんなに熱を帯びてるなんて……。


不思議に感じていると、傘をさした日向君が私を中に入れてくれた。


「じゃあ、気を取り直して行こうか…。」


「うっ、うん…。」


コクンと頷きながら答えると、日向君は私に触れそうなほどの距離まで体を傍に寄せた。