「もしかして、俺…歩くの速い?」


突然聞かれ、私は首を横に振る。


「う、ううん…。ちょうどいいよ…。速度、ピッタリだから…。」


「それなら、良かった…。」


日向君はホッとした笑顔を浮かべた。


そんなところまで気遣ってくれるなんて、本当に優しいなぁ…。


胸がキュンッと締めつけられる。


優しい日向君だからこそ、迷惑かけられない…。


「日向君、私っ……」


再度、話をしようとしたけど、途中で言葉を止めてしまった。


なぜなら、日向君が私に顔を近付けてきたからだ。


「えっ、日向君!?」


吐息がかかるぐらいの距離。


ビックリして、口をパクパクさせていると、日向君が真っ直ぐ私の目を見つめた。



「椎名、俺が家まで送ること、まだ…“迷惑かける”って思ってるだろ?」