「一応お巡りさんとこ行ったら捜索願出とったよ。まあ、事情説明して電話したけどな。みんな心配しおるんよ。お父さんも心配しおった。でも無理に帰すわけにいかんかったけんな。」

「…俺が記憶喪失じゃないって気づいてたんですか?」

「うーん、それはわからんかったけど、記憶喪失であったにせよ、お巡りが嫌っていうのはただ事じゃないやろ。」

「…。」

「うちは気が済むまでおってええよ。俺も泉も花も、いつでも、どんなお前でも受け入れるけん。でも、家の人も会社の人も待っとる。雅樹には、ちゃんと居場所があること、忘れたらいかんよ。」

その言葉に決心がついたようだ。

「…帰ります。」

雅樹さんはきちんと前を向いていた。