世界をあげる


「…太郎さん?」

「…ごめん。行こう。」

太郎さんは俺の腕を引っ張って店を出た。

太郎さんの様子がおかしい。

いつもはゆっくり俺のペースで歩いてくれるのに、今は早足で。

俺の前を歩いているから表情は読み取れない。

「太郎さん!待って!」

俺が叫ぶと、ハッと我に返ったかのように振り向いた。

「…ごめん。」

さっきの人、やっぱり知り合いだったのか。

記憶が少しずつ戻ってきてるのだろうか。

聞いちゃいけない気がした。

とりあえず今はいつもみたいに笑ってほしい。

「太郎さん、ちょっと寄り道しませんか?」