「母さんは俺が21のときに病気で死んで、父さんは俺が28のときに旅行先で事故に巻き込まれて死んだ。」

「そうなんですか…」

利一さんにつらいことを聞いてしまったかもしれない。

「泉がそんなに暗くなる必要はないんよ。今2人のこと思い出しても涙なんて一滴も出んし。笑いしか出てこん。」

「へ?」

「父さんと母さんとおった毎日が楽しくてな。まあそりゃあケンカしたり怒られたり、嫌なときもあったんやろうけど。今は幸せな思い出しか覚えてない。」

「そうですか。」

はははっと笑う利一さんは本当に幸せそうだった。