「…ありがとうなあ。」

利一さんは泣きそうに笑った。

「これ、盗もうとしてほんとにすみませんでした。」

「いや、これは美姫ちゃんが持っとってくれん?」

「え?」

澪さんの原稿と本を美姫さんに差し出す利一さん。

「今までなあ、澪の親戚は薄情なやつらばかりやと思っとった。でも美姫ちゃんは澪のこと想っとってくれたんやなって、嬉しかったんよ。たぶん澪も喜んどる。」

「でも…」

「店には澪の本いっぱいあるし、これは美姫ちゃんが持ってて。」

「…はい。」

美姫さんは本とファイルを受け取り、抱きしめた。