「…利一さん、なんか言ってましたか?」

「うん。…10年以上ここで暮らして、利一さんが私のことどれだけ大切にしてくれたかなんてわかってたことなのにね。私がここに来た理由、利一さんから聞いた?」

「…少し。」

「そう。…小学生のときに散々いろんな親戚のところに行かされて、結局赤の他人だった利一さんのところに預けられたの。もちろん不安もあったけど、それ以上に絶望だったわ。何のつながりもない人のところに捨てられたんだって。」

あ…俺と同じだ。

「それでも、利一さんと一緒にいるうちにそんな気持ちどこかに吹き飛んだ。血のつながりがあるあの人たちよりも利一さんの方が私を大事に思ってくれるんだって。利一さんは何をしても怒らなかった。そりゃあ悪いことしたら普通に叱られたけど。」