「何もしてないじゃん。やらしー」
今は、でしょ?!
「さっきしたじゃんか!」
興奮して大きな声を上げれば、その言葉を待ってたかのように男は意味深に微笑む。
「キスのこと、まだ根に持ってんの?」
「ち、違っ………」
「じゃあ、さっきって何のこと?」
質問攻めしてくる男に、負けてしまいそうだ。
「もういい!だいたい会ったばかりの知らない人に何か話したいわけじゃないの」
「キスした仲じゃん」
「それでも知らない人でしょ」
だいたい名前だって知らないし。
「……、翔」
「かける?」
「名前。ほら、もう知らない人じゃないだろ」
偽名かもしれないのに?
「志乃。」
「、な」
今度は細長い指が私の顎を強引に捕らえた。
