だから、もう逃がさない。





「な、何?」



近づく男に合わせて、遠ざかるように後ろへと進んでいく。


「追いかけっこかよ」


呆れたように笑われるけど、この方法くらいしか逃げ道はない。


トン………、


しまった!


背中には固い壁が触れてこれ以上進むことができない。



「もう終わり?」


艶のある低い声で私を壁と上手く挟み撃ちして男は笑った。



「な、何がしたいのよ…ッ!」

「何となく、逃げるから捕まえてみたくなった」


見下ろす男の顔が見れなくて前だけ見れば制服から覗く色っぽい鎖骨。

フェロモンだしすぎ。



「逃げてない。身の危険を感じただけ」


だからどいて。


そう言ってもどいてくれるわけなくて男は面白そうに笑った。