だから、もう逃がさない。




何も言わない私に諦めたのか、


「別にいいけど。…今度は俺が質問していい?」


マイペースに話題を変えた。


「ケースバイケース。」


そのままそっくり言い返せば、クスクス男は笑う。


「名前教えて。」


変態なことを聞いてきたら警察呼ぼうとしてたけど、意外と普通の質問で驚いた。



「………橘」

「橘?それ下の名前?」

「違うけど、」

「どっちかって言うと、聞きたいの下なんだけど」


強いブラウンの瞳がこちらを見て離さない。


「、志乃。」


変な緊張からようやく解放されたみたいにスッキリした。


「橘志乃、ね」


そう言ってソファーから立ち上がってジリジリと私に近づいてくる。