だから、もう逃がさない。





「ふざけないで。」


冷静になれないのはきっと、キスをするのが初めてだったから。



「もしかしてキス、するの初めてだった?」

「、」



痛いところを突かれた。

まさかこんな簡単にバレるなんて思わなかった。


「もう1回しとく?」

「しない!じゃあサヨウナラ」



悪びれもないその態度に腹が立って捕まれた手首を振りほどく。


バッと立ち上がれば面白がるように立ち上がって私の後をついてきた。


「変態。ついて来ないで」

「入れさせてくれんだろ?」

「警察呼ぶ」



鞄から取った携帯を手にしてもう一度目の前のヤツをみるけど、びっくりするほど落ち着いてる。


「呼べないくせに」

「、」


そうだ、その通り。

初めから呼ぶつもりなんてなかったけど、見透かされたように言われるのがムカついた。



「バカにしないでよ」

「してねーよ。ただ、この状況からしたらコイビト同士にしか見えないけどね」


そう言って、強引に指を絡めてくるソイツ。

ほら、電話すれば?


そう言いたげな顔にきゅっと唇を噛んで15cmくらい上にある綺麗な顔を睨んだ。